税込7,000円以上のご購入で送料、代引き手数料が無料 詳細はこちら 業務店さま向け
見出し画像_白米を美味しく炊く科学
見出し画像_白米を美味しく炊く科学

白米を美味しく炊く科学

テーマ: お米の秘密

記事をシェア

「お米は、研ぎ汁が透明になるまで洗った方が美味しくなる」

そんなふうに思っていませんか?

お米の表面についたヌカをしっかり落とした方がよい。そう考えると、何度も水を替え、念入りに洗いたくなるかもしれません。

しかし、現在の精米技術では、白米の表面に残るヌカは少なくなっています。それにもかかわらず、昔と同じように力を込めて研いでしまうと、米粒が削れたり、割れたりする原因になります。

傷ついた米粒は、炊飯時にデンプンが溶け出しやすくなり、ご飯のべたつきや食感の悪化につながることがあります。(※1、※2)

美味しいご飯を炊くために行っていることが、かえって炊き上がりを損なう場合もあるのです。

こうした話は、洗米だけではありません。お米の量り方、水加減、浸水時間、使う水の種類、炊飯中の温度変化。普段何気なく行っている工程にも、科学的な理由があります。

前回の記事では、お米屋の仕事についてご紹介しました。生産者が育てたお米を、私たちお米屋が保管・精米・選別して食卓へ届ける。そして最後に、お米を「ご飯」に仕上げるのは、食べる皆さんです。

今回は、その最後の工程である「炊飯」に注目します。

私は千葉県君津市のお米と雑穀の専門店「石川商店」で、EC運営・商品開発・法人営業・データ分析などを担当している石川和明です。

五ツ星お米マイスターとしての知識や石川商店で実践している方法に加え、農林水産省の資料や学術論文を参考に、白米を美味しく炊くための原理と方法をご紹介します。

1. お米は、どこまで洗えばいいのか?

最初の水は、すぐに捨てる

洗米でまず意識したいのは、最初の水です。

石川商店では、白米にたっぷりの水を一気に注ぎ、軽くかき混ぜて、すぐに捨てる方法をおすすめしています。

その理由は、精米後のお米には、わずかに「肌ヌカ」が残っている場合があるからです。

肌ヌカとは、精米によって削り取られたヌカが、米粒の表面に付着したもの。現在の精米技術では大部分が取り除かれていますが、通常の白米では洗米によって残った肌ヌカなどを洗い流します。(※1)

また、お米は水に触れると吸水を始めます。最初の水に長く浸しておくよりも、表面に残った肌ヌカなどを手早く洗い流す方が合理的です。

強く研ぐと、米粒に何が起こる?

昔は、お米を両手で擦り合わせるように、しっかり研ぐことが一般的でした。しかし、現在の白米では、そこまで強く研ぐ必要はありません。

農林水産省の資料では、米粒を強く擦り合わせると、表面が削られ、洗い水に流れ出る固形分や砕けた米粒が増えることが紹介されています。(※1)

では、米粒が割れると何が問題なのでしょうか。

農林水産省の「精米JAS」に関する解説では、砕粒が多いお米は、炊飯時にのり状になり、口当たりが悪くなると説明されています。また、水に浸した際に大きな亀裂が生じる「水浸割粒(すいしんわれりゅう)」が多いと、ご飯がべたつき、食感に影響することも示されています。(※2)

せっかく粒の形を保って精米したお米も、家庭で強く擦り合わせ、割ってしまってはもったいないことです。

さらに、お米の表面近くには「亜糊粉層(あこふんそう)」と呼ばれる組織があります。

これは、ヌカ層とデンプン層の境目に位置する、厚さわずか数ミクロンの非常に薄い層です。糖の生成に関わる酵素などを含むことが、精米メーカーの技術資料でも説明されています。(※3)

一般的な白米では、この層の多くが精米時に取り除かれます。ただ、米粒の表面付近には、こうした性質の異なる組織が重なっていることも知っておきたいところです。

私たち石川商店では、精米によって整えたお米の表面を、家庭で必要以上に削らないことを大切にしています。

精米でも洗米でも、米粒をできるだけ傷つけずに扱う。それが、美味しいご飯につながる基本的な考え方です。

石川商店がすすめる洗米方法

私たちが推奨しているのは、指をかぎ爪のように軽く曲げて洗う方法です。手順はとても簡単です。

1. 最初の水を捨てる。白米にたっぷりの水を注ぎ、軽くかき混ぜて、すぐに水を捨てます。

2. かぎ爪状の手で15回洗う。水を切った状態で、かぎ爪状にした指をお米の中へ入れ、優しく15回ほどかき混ぜます。力を込める必要はありません。

3. 水を注ぎながら、5回ほどやさしく混ぜる。手を釜の底から上へ動かし、お米を水の中でふわっと踊らせるようにします。

4. 水を捨てて、洗米終了。すすぎ終わったら、水を一気に捨てます。

石川商店では、ここで洗米を終えます。何度も水を替えてすすぎ直す必要はないと考えています。

研ぎ汁が白くても、本当に大丈夫?

この方法では、最後に捨てる水が、やや白く濁った状態になります。「まだ洗い足りないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、この白さがすべてヌカによるものとは限りません。お米の表面から離れたデンプンの微粒子なども、白濁の原因になります。

2006年の研究では、洗米によって白く濁った水に含まれるデンプン粒の状態が調べられています。(※4)また、2025年にパナソニックが公表した炊飯方法の解説でも、現在の精米技術で仕上げられたお米は、透明になるまで洗う必要がなく、水が少し白い程度で問題ないとされています。(※5)

もちろん、お米によって表面に残る肌ヌカの状態は異なります。

石川商店では、米粒への負荷を抑えながら肌ヌカを取り除く、三段式の精米を行っています。そのように仕上げた白米では、洗米回数を必要以上に増やさず、優しく洗う方法をおすすめしています。

一般的な白米でも、力を入れすぎず、手早く洗うという考え方は共通です。

洗米の目的は、水を透明にすることではありません。米粒を傷つけず、炊飯に適した状態に整えることなのです。

2. 美味しいご飯は、正しい計量から始まる

計量カップは、すりきり一杯にしていますか?

炊飯器でお米を炊くとき、多くの方が付属の計量カップを使っていると思います。

一般的な炊飯器の計量カップは、1合180mL。白米の重量に換算すると、約150gです。(※1)

しかし、毎回すりきり一杯にしているでしょうか。少し山盛りになっていたり、反対に少なめに入っていたり。そのわずかな違いが、炊き上がりのばらつきにつながります。

例えば、計量カップ1杯につき、お米を10g多く量っていたとします。

1合なら10gの違いですが、5合炊く場合には50gの差になります。本来750gのお米を炊くつもりが、800gになっている計算です。

それでも炊飯器の5合の水位線まで水を入れれば、お米に対して水が相対的に少なくなります。反対に、お米の量が少なければ、水の割合が多くなり、柔らかく炊き上がりやすくなります。

同じお米を、同じ炊飯器で炊いているのに、日によって硬さが違う。そんな経験がある場合、まず見直したいのが、お米の計量です。

最もおすすめなのは、重さで量ること

毎回の炊き上がりを安定させたいのであれば、料理用のはかりで重さを量る方法がおすすめです。

白米1合なら約150g、3合なら約450g、5合なら約750g。農林水産省も、重さで量る方法は再現性の高い炊飯につながると説明しています。(※1)

もちろん、毎回はかりを使うのが面倒な方もいらっしゃると思います。その場合は、炊飯器付属の計量カップを使い、お箸などのまっすぐなものですりきり一杯にしてください。

この小さなひと手間が、炊飯の品質を安定させる第一歩になります。

洗米後の水切りは、手早く行う

土鍋などで水の量を重さで管理する場合、洗米後のお米はザルに移して水を切ります。

ここで長時間水切りをする必要はありません。ザルを1〜2回、軽く振って水気を切る程度で十分です。

洗米後のお米は、すでに少しずつ水を吸収しています。また、表面にも水分が付着しています。石川商店では、こうした洗米後の状態も踏まえて、土鍋炊飯の水加減を設定しています。

注意したいのは、ザルに上げたまま長時間放置しないことです。洗米後のお米をザルに上げて放置すると、表面が乾燥して米粒が割れる原因になる場合があります。(※6)

水を切ったら、そのまま次の工程へ進みましょう。

土鍋の水加減は、白米の重量の1.35倍が目安

農林水産省の資料では、一般的な加水量として、白米の重量に対して1.3〜1.5倍程度の範囲が紹介されています。(※1)

石川商店では、土鍋で白米を炊く場合、洗米前の白米重量に対して1.35倍の水を加える方法をおすすめしています。

例えば、白米2合なら300g。

300g × 1.35 = 405g

加える水は約405gです。

これは、洗米後のお米が多少吸水し、表面に水が付着している状態で、手早く水切りを行うことを前提とした石川商店の目安です。

炊飯器の場合は、まず内釜の白米用水位線を基準にしてください。

好みの硬さに合わせて、水加減を変える

ご飯の硬さは、人によって好みが異なります。

石川商店では、いつもの炊き上がりから少し食感を変えたい場合、白米1合につき大さじ1杯(15mL)程度の水を増減する方法をおすすめしています。

硬めで粒立ちのよいご飯が好きな方は、水を少し減らす。柔らかめが好きな方は、少し増やす。まずは小さく調整することが大切です。

ちなみに、「新米は水を少なめにする」という話もよく聞きます。

以前は新米と古米の水分状態に応じて、水加減を変えることが一般的でした。しかし、現在は乾燥・保存技術が進み、お米の水分が適切に管理されるようになっています。

農林水産省も、以前ほど新米と古米で水加減を変える必要がなくなっていると説明しています。(※1)

新米だから必ず水を減らすのではなく、まずは通常の水加減で炊いてみる。その炊き上がりを基準に、自分好みの硬さへ調整する方がよいでしょう。

3. ミネラルウォーターで炊けば、美味しくなる?

高価な水を使えば、美味しいご飯になるとは限らない

ご飯を美味しく炊くために、ミネラルウォーターを使っている方もいると思います。

確かに、水は炊飯に欠かせない材料です。しかし、ミネラルウォーターであれば、水道水より美味しく炊けるというわけではありません。

注目したいのが、水の「硬度」です。硬度とは、水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量をもとに表した数値です。

例えば、身近なミネラルウォーターでも、硬度には大きな違いがあります。

※各メーカーの公表値。サントリー天然水は採水地によって硬度が異なります。(※7)

同じミネラルウォーターでも、これほど違いがあるのです。

カルシウムが多い水では、米粒が膨らみにくくなることがある

2002年に発表された研究では、カルシウムを加えた試験用の水でお米を炊くと、通常の水で炊いた場合より、米粒が硬く、膨らみにくくなることが確認されました。(※8)

カルシウムによる米粒組織の変化が関係していると考えられています。

一方、2016年の別の研究では、硬度300mg/Lや700mg/Lの水で炊いた無洗米も、蒸留水で炊いたご飯と同程度に好まれました。それに対して、硬度約1,560mg/Lや3,200mg/Lという非常に高い水では、色や味の評価が低下しています。(※9)

つまり、硬度が少し高いだけで、美味しく炊けなくなるわけではありません。それでも、極端な硬水を避け、軟水を基本にする方が、白米の炊飯では扱いやすいと考えられます。

日本の水道水は、意外と軟水が多い

ここで、もう一つ興味深いデータをご紹介します。

2021年に発表された研究では、日本全国665地点の水道水を調査し、平均硬度は48.9mg/Lという結果が得られました。(※10)

日本の水道水は、全体として硬度が低い傾向にあります。ただし、国内でも地域によってかなり違いがあります。

東芝ライフスタイルが、日本水道協会の2019年度データをもとに算出した都道府県別の平均硬度では、次のような結果になっています。(※11)

※2019年度のデータに基づく都道府県平均です。同じ県内でも水源や地域によって硬度は異なります。

千葉県と山形県を比べると、平均硬度には3倍以上の違いがあります。それでも、日本の水道水は全体として比較的軟水が多く、一般的な炊飯に十分利用できます。

高価なミネラルウォーターを用意するよりも、まずは飲用に適した水道水や浄水器を通した水を使い、正確な水加減で炊く。私たち石川商店では、こちらを基本としておすすめしています。

4. 浸水時間は、長ければ長いほどいい?

なぜ、炊飯前に水へ浸すのか

洗米と水加減が終わったら、次は浸水です。

浸水とは、炊飯前にお米を水に浸し、米粒の内部まで水を吸収させる工程です。

白米の主成分であるデンプンは、水分を含んだ状態で加熱されると膨らみ、柔らかくなります。この変化を「糊化(こか)」といいます。

ところが、米粒の中心まで水が行き渡る前に加熱すると、外側のデンプンが先に糊化してしまいます。その結果、内部まで十分に水が浸透しにくくなり、芯の残った硬いご飯になることがあります。(※1)

浸水は、米粒の中心までふっくら炊き上げるための準備なのです。

お米は、30分でどれくらい水を吸う?

農林水産省の資料によると、一般的な白米は、浸水開始から30分ほどで急速に吸水し、その後は徐々に速度が落ち、約2時間でほぼ飽和状態になります。(※1)

飽和とは、その条件下で、それ以上は水を吸いにくくなった状態です。ただし、吸水の速度は水温によって変わります。水温が高いほど初期の吸水速度は速く、冷たい水では時間がかかります。

そのため、一般的な鍋炊飯では、30〜60分程度を一つの目安にするとよいでしょう。

冷たい水で浸水させるメリット

農研機構の研究では、水温5℃・15℃・25℃で浸水させたお米を比較しています。

低温では初期の吸水速度が遅いものの、時間をかけることで吸水量が増え、5℃で120分間浸水した条件では、柔らかさや粘りについて良好な結果が得られました。(※12)

この研究は加工米飯を対象としていますが、冷たい水で時間をかけて吸水させる方法を考えるうえで参考になります。

土鍋で炊く場合には、室温が高くなければ約1時間、冷蔵庫でじっくり浸水させる場合には2時間程度を一つの目安にするとよいでしょう。

夏場に、長時間の常温浸水をおすすめしない理由

ここで注意したいのが、夏場の浸水です。

夏場は室温や水温が高くなりやすく、お米の吸水も比較的早く進みます。一方、水分と栄養分がある環境は、微生物が増殖しやすい条件にもなります。

2006年に発表された研究では、温かい水で長時間浸水させた場合、浸水液の一般生菌数が増加することが確認されました。さらに、炊飯後のご飯についても、黄ばみやにおいに関する品質の低下が認められています。(※13)

せっかく美味しいご飯を炊くために浸水させたのに、長時間置いたことで風味を損なってしまっては意味がありません。

そのため、夏場に常温で浸水させるなら、30分程度を一つの目安にする。時間に余裕があり、じっくり吸水させたい場合は、冷蔵庫を使う。

私たち石川商店では、季節や水温に合わせて浸水時間を調整する方法をおすすめしています。

炊飯器では、事前浸水が不要な場合もある

ここまで浸水の重要性を説明してきましたが、炊飯器の場合には少し事情が異なります。

現在の炊飯器には、炊飯プログラムの中に吸水工程が組み込まれている機種が数多くあります。農林水産省も、近年のマイコン搭載炊飯器には、加熱しながら吸水させる工程を組み込んだ製品が多いと説明しています。(※1)

つまり、土鍋と炊飯器では、浸水の考え方が異なります。

土鍋では事前浸水を基本とする。炊飯器では、吸水プログラムを生かす。

それぞれの特徴を理解することで、必要以上に手間をかけず、美味しいご飯を炊くことができます。

5. 生米は、どうして甘くふっくらしたご飯になるのか?

美味しさを左右する、デンプンの変化

白米の主成分であるデンプンは、主に「アミロース」と「アミロペクチン」という2種類の成分で構成されています。どちらも、ブドウ糖が多数つながってできた多糖類です。

この2つの割合などが、ご飯の硬さや粘りといった食感に関係しています。例えば、ミルキークイーンのような低アミロース米は、一般的なうるち米よりも粘りが強く、柔らかい食感になりやすい品種です。

では、十分に水を吸ったお米を加熱すると、何が起こるのでしょうか。

炊飯中の温度が60℃付近になると、デンプンの糊化が始まります。(※1)米粒の内部で、水を吸ったデンプンが膨らみ、生米特有の硬さが変化していきます。

さらに温度が上がり、加熱が進むことで、柔らかくふっくらしたご飯になるのです。

ご飯の甘みは、炊飯中にも生まれる

もう一つ、知っておきたい変化があります。

お米には、デンプンを分解する「アミラーゼ」という酵素が含まれています。炊飯中、この酵素の働きなどによって、デンプンからブドウ糖などの糖が生成されます。

2007年に発表された研究では、炊飯中の温度上昇を遅くすると、米飯中のブドウ糖量が増えることが確認されました。また、加熱途中に60℃で15分間温度を保持した条件でも、糖量が増加しています。(※14)

お米を加熱するとき、どのように温度が上がるかによって、甘みを構成する成分の量も変わるのです。

一方、ご飯の美味しさは甘みだけで決まるわけではありません。香り、硬さ、粘り、粒立ちなど、さまざまな要素が関係しています。

適切な時間で沸騰させ、十分に加熱し、蒸らすこと。こうした温度変化が、美味しいご飯を炊くための大切な要素になります。

6. 石川商店が、白米の土鍋炊飯をおすすめする理由

土鍋には、炊飯に向いた熱の特徴がある

現在の炊飯器は性能が高く、家庭でも手軽に美味しいご飯を炊くことができます。そのうえで、私自身は、白米を炊くなら土鍋をおすすめしたいと考えています。

理由の一つは、土鍋の熱の伝わり方です。

一般的な陶製の土鍋は、金属製の鍋と比べて熱が伝わりにくく、温まり方が緩やかになりやすいという特徴があります。

この性質は、先ほど説明した炊飯中の糖生成とも関係する可能性があります。炊飯中の温度上昇が緩やかになれば、デンプンから糖が生成される温度帯を通過する時間も変わるためです。

もう一つの特徴が、蓄熱性です。

土鍋は、いったん温まると冷めにくく、火を弱めた後や、火を止めて蒸らしている間も、鍋に蓄えられた熱が炊飯に使われます。蓄熱性を利用した加熱と蒸らしは、土鍋炊飯の大きな特徴です。(※15)

こうした熱の特性に加え、石川商店では、実際に炊いたときの食感や粒立ちなどを踏まえ、土鍋での炊飯をおすすめしています。

石川商店がすすめる、土鍋の炊飯方法

石川商店で実践している基本の方法を、白米2合を例にご紹介します。

1. 洗米する。最初の水をすぐに捨て、かぎ爪状の手で優しく15回ほどかき混ぜます。その後、水を注ぎながら5回ほど軽くすすぎ、水を捨てます。

2. 水を切って、浸水させる。洗米後のお米をザルに移し、1〜2回軽く振って水気を切ります。白米2合(約300g)に対して、水405gを目安に加えます。ボウルにお米と水を入れ、室温が高くなければ約1時間、冷蔵庫であれば2時間程度を目安に浸水させます。土鍋ごと冷蔵庫に入れる必要はありません。浸水が終わったら、ボウルのお米と水をすべて土鍋に移します。

3. 中火で加熱する。中火で加熱し、沸騰させます。石川商店では、約2合を炊く際、沸騰まで10分程度を目安にしてきました。ただし、重要なのは時間よりも沸騰の状態です。蓋の穴から勢いよく湯気が継続して出る、内部から強い沸騰音が聞こえるといった状態を確認します。

4. とろ火で加熱する。沸騰したら、とろ火に落として約12分加熱します。水分を利用しながら米粒の中心まで十分に加熱し、炊き上げていきます。

5. 火を止めて蒸らす。蓋を閉めたまま15分程度蒸らし、その後、優しくほぐしたら完成です。

中火・弱火・とろ火は、どれくらいの火力?

土鍋炊飯では、火加減を自分で調整します。一般的なガスコンロでは、次のように考えると分かりやすいと思います。(※16)

家庭によってガスコンロの火力も土鍋の大きさも異なります。

私自身も、2合程度を炊いた場合と5合程度を炊いた場合では、沸騰までにかかる時間が違いました。また、冬場には沸騰までの時間が長くなった記憶があります。

そのため、紹介した時間はあくまでも目安です。沸騰までは中火を基本にし、湯気や音を確認しながら火力を調整する。沸騰後はとろ火に落として、米粒の中心まで十分に加熱する。

この感覚をつかむことが、土鍋炊飯のコツだと思います。

なお、炊飯専用土鍋の中には、沸騰後に火を止め、蓄熱によって炊き上げる製品もあります。土鍋によって炊飯方法は異なりますが、まずは基本の方法で炊き、ご家庭の土鍋に合わせて調整してみてください。

7. 炊き上がった後にも、美味しさを変える工程がある

炊飯器のブザーが鳴ったら、さらに蒸らす?

「ご飯が炊き上がったら、そのまま15分ほど蒸らした方が美味しい」

そう聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

2025年にパナソニックが実施した調査では、20歳以上の炊飯器所有者600人に、炊飯後の正しいと思う方法を尋ねています。

その結果、興味深い違いが見られました。

「炊飯後はすぐに蓋を開けず、一定時間蒸らしてからの方がよい」と回答した人が41%。一方、「炊飯後は、白米をすぐにほぐした方がよい」と回答した人は33%でした。(※5)

※パナソニック調べ。2025年7月7日、20歳以上の炊飯器所有者600人を対象としたインターネット調査。図は該当する2つの回答のみを表示しています。

蒸らしてから蓋を開けた方がよいと考える人の方が、多かったのです。

しかし、現在の多くの炊飯器では、蒸らしの工程まで炊飯プログラムに組み込まれています。つまり、炊飯完了のブザーが鳴った時点で、すでに蒸らしまで終わっているのです。

そのため、こうした炊飯器では、さらに時間を置くのではなく、早めにほぐすことをおすすめします。(※1、※5)

なぜ、炊き上がったらすぐにほぐすのか?

炊飯中、鍋の内部では、場所によって熱の伝わり方や水分の状態が異なります。

2023年の日本調理科学会の研究発表では、土鍋で炊いたご飯の位置によって硬さが異なり、鍋肌の下部が中心上部より硬いという結果が報告されています。(※17)

同じ鍋で炊いたご飯でも、すべての場所がまったく同じ食感になるとは限らないのです。

また、炊飯後に長時間蓋を閉めたままにすると、蓋の内側に付着した水分が戻り、ご飯の一部が水っぽくなる場合もあります。

そこで、炊き上がったら早めにほぐし、余分な蒸気を逃がしながら、食感のムラを軽減します。

十字に分けて、天地を返す

石川商店では、炊き上がったご飯を、まずしゃもじで十字に切るようにして4つに分ける方法をおすすめしています。

その後、しゃもじを底まで入れ、下のご飯を上へ返すように優しくほぐします。大切なのは、米粒をつぶさず、必要以上に何度も混ぜないことです。

農林水産省やパナソニックも、炊き上がったご飯を底から返し、余分な水分を逃がす方法を紹介しています。(※5)

炊飯は、火を止めたら終わりではありません。最後に優しくほぐすことまでが、美味しいご飯を仕上げる工程なのです。

8. よくある「炊飯の思い込み」8選

最後に、ここまでの内容とあわせて、炊飯で注意したい習慣を8つにまとめました。

1. 研ぎ汁が透明になるまで、何度も強く洗う。強く研ぐと、米粒が削れたり割れたりする原因になります。洗米は水の透明度だけを目安にせず、優しく手早く行いましょう。

2. 洗米後、ザルに上げたまま長時間放置する。洗米後のお米は、表面が乾燥すると亀裂が入りやすくなります。水切りは短時間で済ませ、そのまま浸水や炊飯へ進みましょう。(※6)

3. 新米は、水を少なめにして炊く。現在は乾燥・保存技術が進み、新米だからといって必ず水を減らす必要はありません。まずは通常の水加減で炊き、好みの硬さに調整するのがおすすめです。(※1)

4. 炊飯器に氷を入れると、美味しくなる。冷たい水で時間をかけて吸水させる方法には一定の根拠がありますが、マイコン搭載炊飯器では、吸水中の温度が自動で調整されます。氷を入れること自体にこだわる必要はありません。(※5)

5. 浸水の最初から塩や醤油を加える。食塩や醤油は、お米の吸水を妨げることが研究で確認されています。炊き込みご飯などでは、先に水で浸水させてから調味料を加える方法がおすすめです。(※18)

6. 油を加えると、美味しくなる。油の添加には、ご飯のツヤや付着性を変える効果が期待できます。一方、食味全体が改善するとは限りません。通常の白米では、まず水加減や炊飯方法を整えることをおすすめします。(※19)

7. 炊飯器のブザーが鳴ってから、さらに15分ほど蒸らす。現在の多くの炊飯器では、蒸らしまで自動で行っています。炊飯完了後は早めに蓋を開け、優しくほぐす方がよいでしょう。(※5)

8. お湯で研ぐ・炊くと、早く美味しくなる。お湯で洗米すると、お米に含まれる酵素「アミラーゼ」が働き、デンプンから生成された糖が洗い水とともに流れ、甘みが損なわれることがあります。(※20)また、お湯で炊くと米粒への吸水が速くなり、ご飯がべたつく原因になる場合もあります。(※21)洗米も炊飯も、水道水や浄水器を通した水を使うことをおすすめします。


おわりに|美味しいご飯の正解は、一つではない

ここまで、洗米から炊き上がりまで、白米を美味しく炊くための方法を科学的な視点からご紹介してきました。

普段当たり前のように行っている炊飯も、一つひとつの工程を見直してみると、意外な発見があります。

何度も強く洗うより、米粒を優しく扱うこと。高価な水を使うより、まずは正確な水加減を心がけること。そして、使う炊飯器具の特徴を理解し、それに合った方法で炊くこと。

特別な道具や材料を用意しなくても、日々の炊飯で改善できることは少なくありません。

私自身は、白米の美味しさを楽しむ方法として、土鍋での炊飯をおすすめしています。ただし、美味しさの感じ方は人それぞれです。

柔らかく、もっちりとしたご飯が好きな方もいれば、少し硬めで粒立ちのよいご飯を好む方もいます。

科学的な知識は、誰にとっても同じ一杯を作るためではなく、自分が美味しいと思うご飯を、安定して炊くために役立てるものだと考えています。

もし今回の記事を読んで、炊き方を変えてみようと思った方がいらっしゃれば、まずは一つの工程だけ試してみてください。

お米を正確に量る。いつもより優しく洗ってみる。水加減を少し変えてみる。

一度にすべてを変えるより、一つずつ試した方が、炊き上がりの違いに気づきやすくなります。

前回の記事では、「美味しいご飯は、生産者・お米屋・消費者の共同作業」という考え方をご紹介しました。

農家さんが育てたお米を、私たちお米屋ができる限り良い状態でお届けする。そして最後に、ご家庭で美味しいご飯に仕上げていただく。

その最後の工程を、少しでも楽しんでいただけたら嬉しく思います。


保存版|白米を美味しく炊く基本の手順

※土鍋の水量や加熱時間は石川商店の経験に基づく目安です。炊飯量や鍋の構造、火力に応じて調整してください。

参考文献・出典

※1 農林水産省「米の調理特性」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/02/charact_eristic_01.html

※2 農林水産省「精米JAS(日本農林規格)について」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/02/charact_eristic_04.html

※3 東洋ライス株式会社「金芽米」「亜糊粉層」に関する技術解説
https://www.toyo-rice.jp/kinmemai/

※4 「米粒への水の吸収と移動に関する基礎的研究(第2報)―精白米の吸水と洗米におけるデンプン形態の特性―」(2006)『農業機械学会誌』68巻3号、35–45頁。
https://doi.org/10.11357/jsam1937.68.3_35

※5 パナソニック(2025年9月2日)「『お米に関する調査』を発表 “炊飯器マスター”が教える意外と知られていないおいしいごはんの炊き方を紹介」
https://panasonic.jp/topics/2025/09/000001081.html

※6 東芝ライフスタイル「ご飯をおいしく炊くコツを知りたい」公式FAQ
https://faq-toshiba-lifestyle.dga.jp/answer.html?category=117&id=211&page=1

※7 サントリー「サントリー天然水の硬度」、エビアン「よくあるご質問」、コントレックス「成分の特徴」(各社公表値)
https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001888.html / https://www.evian.com/jp/faq/ / https://www.contrex.jp/faq/composition

※8 大西真理子・庄司一郎・小川宣子・加藤好光・長岡俊治・下村道子(2002)「カルシウムイオン水が炊飯における飯の組織形態に及ぼす影響」『日本家政学会誌』53巻11号、1087–1096頁。
https://doi.org/10.11428/jhej1987.53.1087

※9 水野千恵・髙村仁知(2016)「ミネラルウォーターの硬度が無洗米飯の性状と嗜好性に及ぼす影響」『食品・臨床栄養』e2016巻、1–12頁。
https://doi.org/10.11473/fcn.e2016.1

※10 Hori, M. et al.(2021)”A survey of monitoring tap water hardness in Japan and its distribution patterns.” Scientific Reports, 11, 13546.
https://doi.org/10.1038/s41598-021-92949-8

※11 東芝ライフスタイル「炊き分け|水道水の硬度」(日本水道協会の2019年度データをもとに算出)
https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/rice-cookers/feature/course/

※12 農研機構・食品総合研究所(1994)「米の浸漬温度・浸漬時間の調節による加工米飯の食味および食味保存性の向上」
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nfri/1994/nfri94-07.html

※13 深井洋一・岡村修・塚田清秀(2006)「炊飯時の浸漬時間及び水温が米飯の品質に及ぼす影響」『日本食品科学工学会誌』53巻11号、592–595頁。
https://doi.org/10.3136/nskkk.53.592

※14 馬橋由佳・大倉哲也・香西みどり(2007)「炊飯の温度履歴が米飯の化学成分に及ぼす影響」『日本調理科学会誌』40巻5号、323–328頁。
https://doi.org/10.11402/cookeryscience1995.40.5_323

※15 キッコーマン「土鍋ご飯の炊き方」、長谷園「かまどさん 基本の炊き方」
https://www.kikkoman.co.jp/homecook/tsushin/tips0001/ / https://store.igamono.jp/?mode=f7

※16 味の素パーク「火加減」
https://park.ajinomoto.co.jp/contents/basic/heating/

※17 外岡和菜・川村愛李・石川伸一(2023)「炊飯による米粒の配置と食感に関する研究」日本調理科学会大会研究発表要旨集。※学会発表。
https://doi.org/10.11402/ajscs.34.0_67

※18 伊藤純子・香西みどり・貝沼やす子・畑江敬子(2004)「米飯の炊飯特性に及ぼす各種調味料の影響(第1報)」『日本食品科学工学会誌』51巻10号、531–538頁。
https://doi.org/10.3136/nskkk.51.531

※19 畑江敬子・綾部園子・貝沼やす子・島田淳子(1995)「材料添加によるタイ国産米の食味改良効果」『日本調理科学会誌』28巻4号、231–236頁。
https://doi.org/10.11402/cookeryscience1995.28.4_231

※20 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構『お米・ごはんBOOK』12〜13頁「なぜお湯で米を洗ってはいけないの?」
https://www.komenet.jp/nandemobook/documents/ip_12-13w.pdf

※21 日立「ごはんが軟らかかったりベタつきます。」(「使用する水の種類」の項)
https://kadenfan.hitachi.co.jp/support/kitchen/q_a/help01.html

石川商店の実践方法について:かぎ爪状での洗米、すすぎ回数、白米重量に対する水1.35倍の加水、土鍋の炊飯時間、ほぐし方については、社内資料および実務経験を基に記載しています。



Profile Image

この記事を書いた人

石川 和明

1989年生まれ。Hawaii Pacific University卒業後、IT系人材会社に入社。約10年間、企業の採用支援や人材紹介、人事領域のコンサルティングなどに携わった後、家業である石川商店へ。現在は、お米・雑穀の専門知識を生かし、EC通販運営、商品開発、法人営業、データ分析、チームマネジメント、業務改善などを幅広く担当。保有資格:五ツ星お米マイスター/お米ソムリエ/ごはんソムリエ/雑穀エキスパート/雑穀調合士/千葉県農薬管理指導士

1989年生まれ。Hawaii Pacific University卒業後、IT系人材会社に入社。約10年間、企業の採用支援や人材紹介、人事領域のコンサルティングなどに携わった後、家業である石川商店へ。現在は、お米・雑穀の専門知識を生かし、EC通販運営、商品開発、法人営業、データ分析、チームマネジメント、業務改善などを幅広く担当。保有資格:五ツ星お米マイスター/お米ソムリエ/ごはんソムリエ/雑穀エキスパート/雑穀調合士/千葉県農薬管理指導士

01 送料・配送について

7,000円以上で送料・代引き手数料が無料
1回のご注文金額が7,000円(税込)以上の場合、送料・代引き手数料ともに無料となります。7,000円未満の場合は、送料 660円(税込)・代引き手数料330円(税込)を頂戴いたします。※沖縄・離島は対象外となります。
配送地域
沖縄・離島へのお届けは、サイズ・重量により送料が異なります。詳細は「送料・配送について」のページをご確認ください。また、海外への配送には対応しておりません。
お届けにかかる日数
平日11時までのご注文は、原則当日に発送いたします。お届けまでの日数は地域により1日~3日が目安となります。

02 返品・交換について

返品・交換
商品不良などの当店責任による返品・交換の場合、商品到着後7日以内に下記まで事前にご連絡をお願いします。事前にご連絡がない場合、返品・交換をお受けできない場合がございます。詳しくは返品・交換についてをご覧ください。
返品・交換のご連絡先と配送先
〒299-1162 千葉県君津市南子安3-17-23 地図
フリーダイヤル:0120-141113
※受付時間 平日 9:00-18:00
FAX:0439-52-0606
E-mail:info@gokokumai.co.jp

03 お支払い方法について

クレジットカード
次のカードでお支払いが可能です。
VISA/MASTERCARD/JCB/DinersClub/AMERICAN EXPRESS
代金引換
商品のお受け取り時に、配送ドライバーへ代金をお支払いください。ご注文金額が7,000円未満(税込)の場合は、代引き手数料330円(税込)を頂戴いたします。
その他の支払い方法
以下の支払い方法がご利用いただけます。
PayPay/amazon pay